Aquariumは、企業のデータ・業務・判断をAIが理解できるContextへ変換し、それをもとにAIエージェントを企業固有の業務に合わせて構築・カスタマイズし、安全に実行・運用するためのプラットフォームです。
エンタープライズAIエージェントの開発では、データ接続、業務コンテキストの設計、Workflowの実装、評価、運用環境の構築を組み立てる必要があります。このうちデータの接続、用語や概念の定義、判断基準の記録は、その企業について一度作れば、以降の業務でも使えます。
Aquariumは、この部分を共通の基盤として持ち、その上に業務ごとのエージェントを載せるためのプラットフォームです。Context Engine、Agent Operations、AI FDEの3つを一体化し、業務設計から本番導入、評価、継続改善までを支援します。
Context Engineがデータの意味と判断基準を保持し、Agent Operationsがその上でエージェントを実行・監視・統制し、AI FDEがその両方を操作してエージェントを作り、改善します。
企業固有のデータ・知識・判断履歴を、AIが利用できるContextへ変換する機能群。3つの層で構成されます。
複数のデータソースの意味的統合による概念整理。Business Contextの言語化、名寄せ、カラムの意味付けを行います。
分断された企業活動を一つの業務モデルとして捉え、その上でシミュレーションや検証、継続的な改善を可能にします。統合・可視化、リアルタイムの状況把握、異常・変化の監視、影響範囲の分析、将来や選択肢のシミュレーション、全体最適な計画・対応の算出、現実の業務の変更、実績のモデルへの反映まで。いわば企業のデジタルツインです。
LLM呼び出しレベルの意思決定における人間の好み、経験則、定性的な判断基準、判断根拠、暗黙知を記録します。AIエージェントが利用されるほど動的に成長します。
AIエージェントを設計・実行・監視・統制する機能群。企業単位で作る業務特化エージェントのデプロイと運用を容易にします。
Workflow.yamlを書けば、実行環境、証跡の記録、承認フロー、監視、コスト計測、評価が揃った状態でエージェントが動きます。
出力は証跡に、承認は実名の承認者に紐づき、Runは監査のために再現できます。
Context EngineとAgent Operationsを操作しながら、人間のForward Deployed Engineer(FDE)が担ってきた構築作業を担う仕組み。次の役割を担うものとして開発を進めています。
顧客ヒアリング結果や業務資料、マニュアルから業務プロセスを整理
業務プロセスとデータから、Context EngineをもとにWorkflow.yamlを作成
評価データセットをもとにエラー分析と自己精度改善
モデルの組み合わせ実験からコスト最適化
運用上のデグレ対応
Context Engineに定義されたデータの意味と判断基準の上で、Agent Operationsがエージェントを実行し、その結果を記録します。どの出力が承認され、どこで差し戻され、担当者がどう修正したか。AI FDEはその記録をもとに評価データセットを更新し、ワークフローを修正し、Agent Operations上で検証してから適用します。同一企業に対し業務を積み重ねるほど、Context Engine上のデータが増え、次の立ち上げが速くなります。
AIの先端技術だけでも、業務への実装経験だけでも、エンタープライズAIエージェントは作り続けられません。Aquariumは、Sakana AIが積み上げてきた3つの柱の上に立っています。
Sakana AIは設立以来、モデルを大きくすること以外の方法でAIの能力を引き上げる研究に取り組んできました。推論時により多くの計算を使って答えの質を高める推論時スケーリング(AB-MCTS)、複数のモデルを1つの基盤モデルのように協調させるモデルオーケストレーション(Sakana Fugu。基盤技術であるTrinityとThe ConductorはICLR 2026に採択)、そしてAI自身が仮説を立て検証し改善を繰り返す自己改善(The AI Scientist、ShinkaEvolve、ALE-Agent)。
いずれも、単一のモデルの性能に依存せず、複数の推論・複数のモデル・長い試行錯誤を組み合わせて解くというアプローチです。これらの成果を、Aquariumに継続的に組み込んでいきます。
| 研究資産 | Aquarium上での役割 |
|---|---|
| ShinkaEvolve | アルゴリズムの自己進化(AI FDE) |
| Fugu | モデル選択・オーケストレーション(Agent Operations) |
| Evals | 評価機能(Agent Operations) |
| Skills | AREの精度改善・モデリングの勘所の形式化(AI FDE) |
研究と並行して、実際の企業の業務にAIを組み込む実装を進めてきました。三菱UFJ銀行との包括的パートナーシップのもとで開発した「AI融資エキスパート」は、初期分析・情報整理から財務シミュレーション、稟議書ドラフト作成までの融資業務の流れを対象に、行内規程・過去の融資データ・業務マニュアルを参照しながら成果物を生成します。SMBCグループとは複数AIエージェントを活用する提案書自動生成アプリケーションを開発し、大和証券グループとは総資産コンサルティングを高度化するAIの共同開発を進めています。金融以外でも、防衛、偽・誤情報対策など、精度と説明責任の要求が高い領域に取り組んでいます。
いずれの案件も、Forward Deployed Engineer(FDE)が顧客の業務に入り込んで構築しています。どのデータベースに何が入っているのかを特定し、部署ごとに異なる用語の定義を確認し、担当者が何を根拠に判断しているのかを聞き取る。その上でワークフローを設計し、評価データセットを作り、精度を上げ、業務側のフィードバックを受けて修正する。この工程で積み上げた業務設計と精度改善の知見が、Aquariumの設計の土台になっています。
用語の定義やデータの所在といった、企業ごとに異なる固有の知識やルールをAIに理解させ、正確で一貫したデータ分析を実現するための機能群。この領域のケイパビリティを、Sakana AIは[買収先社名]の買収と米国支社の設立によって獲得しました。
FDEが案件ごとに手作業で行ってきたデータの意味付けと判断基準の記録は、この基盤によってContext Engineという製品機能になります。企業について一度作れば、以降の業務でも参照できる資産として残ります。
Aquariumが向くのは、業務ごとに固有の判断があり、その判断が社内に分散したデータと規程に依存している領域です。判断の基準が文書と担当者の経験に散らばっているほど、Context Engineに集約する価値が大きくなります。以下は、対象になる業務を型として整理したものです。
Sakana AIがこれまで各産業で多く手がけてきた領域です。人が規程やマニュアル、過去の記録を参照しながら判断し、成果物をまとめている業務が該当します。
社内規程、過去の実績データ、業務マニュアルを参照して判断材料を整理し、成果物のドラフトを作る。最終的な確認と確定は人が行う。
想定業種銀行・保険・リース・不動産
複数の情報源にまたがる顧客の状況を整理し、提案に必要な材料をまとめ、ドラフトを生成する。
想定業種証券・保険・法人営業を持つ企業全般
規程が細かく、例外処理と承認の多い定型業務を、証跡と承認者を残しながら処理する。
想定業種金融・製造・公共
社内外に分散した情報を集め、判断に必要な形にまとめて継続的に更新する。
想定業種企画・調査・リスク管理部門を持つ企業全般
Context Engineが縦割りの業務状態を統合できることで、新たに対象にできる領域です。今後取り組んでいきたい型として整理しています。
人、設備、場所といった有限の資源を、リアルタイムの需要に応じて割り当て直す。
想定業種医療・物流・公共・製造
一つの資産について、設計から製造、供給、運航、保全までを複数部門・複数企業で共有する。
想定業種製造・インフラ・エネルギー
個々の設備ではなく、工程全体の状態と制約を考慮して運転条件を継続的に最適化する。
想定業種プラント・エネルギー・製造
どの業務にAIエージェントを適用すべきか。手元にあるデータで何ができるか。どこから着手するのが現実的か。Sakana AIのForward Deployed Engineerが、お客様の業務とデータを実際に確認しながら整理します。構想段階からのご相談も承ります。